心を引き上げるのは、心ではなく体

 ヨーガのヘルシーなイメージは、もう随分と市民権を得ています。美容やダイエットの面だけでなく、最近は「癒し」としてヨーガの心への効果の側面も少しずつ知られてきている印象です

 

しかし、古典的なヨーガの時代、ヨーガを「健康法」と見ていた人は殆どいなかったと思います。本来のヨーガは「輪廻(りんね)」という永遠に続く生まれ変わりの連鎖(かつてのインド人の死生観では、これが苦しみの根本原因と考えるのです)からの脱出、つまり「解脱」をすることで、宇宙と完全に同化し(宇宙を支える根本的な原理はブラフマン/アートマンと呼ばれます。)二度と生まれ変わる事が無いことが至上の幸福とされました。それは、完全に静かで、永遠の自由であり、二度と惑う事は無い悟りの境地、という事です。


 「解脱」は大変貴重であり、誰もが出来るわけではありません。そのプロセスを経るには先ずは心身が真に安らかで健やかでなければ、その先の境地には至らずに輪廻を繰り返すのです。哲学的思考によりそう考えたかつてのインドの人達は、身体を、心を整えるために様々な手法を生み出しました。それが、現在も伝わるアーサナと言われる身体操作や、呼吸法、瞑想法なのです。



 現在伝わるヨーガは、そのエッセンスを受け継ぎ、古典ヨーガのプロセスの中にあるアーサナや呼吸法、瞑想法などを使って身体を健やかに整え、心の安定を図る健康法として確立してきました。経験値、直観知的な伝統が、最近では西洋医学からのエビデンス(証拠)も取られ、その効果が証明されつつあります。実は、西洋医学は「心」を扱うのはあまり得意では無いですね。外科的医療や細菌学の分野ではとてつもない科学的発展がありますが、心の分野では分析は得意でも、実際の療法となると言語と投薬でのアプローチが主ではないかと思います。

 

 言語というのは心が反映された言葉です。つまり、心が感じたものを変換して言葉にしている訳ですが、長年の思考の癖は個々人でかなり多様性があるため、その癖のある心を通して、自分の心を正しく見て言語化し、理想の方向に引き上げることはとても難しいです。


 ヨーガでは古くから「パンチャ・コーシャ(五つの鞘(さや))」という身体の構造論を持っています。一番外側の鞘の食物鞘(肉体)を一番粗雑(扱いやすい)鞘として、次第に内面に入ると共に微細な鞘へと深まります。ちょうどマトリョーシカの様な5つの層として描かれることが多いです。これらの鞘は相互に作用し合い、内側の鞘ほど精神の奥深くへ、本質的な自己へと向かいます。


食物鞘(肉体・・・筋骨格、内臓器官など。食物によって形作られる鞘)

生気鞘(呼吸により取り込まれる「プラーナ」という「気」のような生命エネルギー)

意思鞘(感覚や感情などを受け取り、意思伝達の役割をする)

理智鞘(認知/判断をつかさどり、次の行為に対する決定権を持つ)

歓喜鞘(霊性・・・一番本質的な層。心素(しんそ)と呼ばれるあらゆる顕在、潜在意識記憶もこの層にあり、更に中心部には全ての根本原理であるアートマンが鎮座する)


上記は、初めはちょっと難しいし信じ難いところですが、CGで描かれる骨格や血流、神経系のみ取り出した映像が、ちょうど人間の形をした鞘のように見えるのを思い出すと、この捉え方自体はそれほど突飛では無いことに気づくかもしれません。西洋医学が臓器のひとつずつを部分的にみるのとは違い、ある作用を軸にものを見ようとしており、その中に「心」の作用も含まれているわけです。


この中で一番コントロールがしやすく、目に見えやすいものは「食物鞘」つまり、体です。体を使った行為とその刺激を通して、先ずはありのままに感じ、認知し、判断する、という練習をしていきます。身体に不調があると心にも負担になります。その逆もそうです。「心身一如」という言葉がありますが、心と身体は一体で分ける事が出来ないという意味です。ですから、体を使って先ず体を癒し、続いて体を通して心にアプローチする、という順序を踏みます。昔のインドの達人たちは、徹底的に「心」と向き合った末に、この流れで心を整えることが一番効率が良いと知ったのだと思います。

 

 以前、私はうつやパニック障害に悩まれる方の多く集まるヨーガ教室に居ましたが、その方々の多くが、心と同時に身体も大変に緊張をしていました。体からの負担で、更に心が疲弊するという悪循環があると思います。心の問題が大きいと余計に頭を使い、心を使ってしまいがちですが、むしろ体を使う事で心を引き上げる、というように意識の向きを変える必要があるかもしれません。


大宮YOGAふりこ

朱音


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